遠距離恋愛の切なさと幸せをくれた彼との2年間の記憶

「じゃあ、行ってくるね」
駅の改札で彼が笑って手を振ったあの日。私は笑い返しながら、喉の奥に込み上げてくる涙を必死で飲み込んでいた。

大学4年の春、就活の末に彼が内定をもらったのは、東北のメーカー。
私は関西の出版社を志望していて、お互いの将来を思えば、それぞれの選択は正しかった。
でも、心はそんなに簡単に割り切れなかった。

付き合って1年半。
そのうちの2年間が遠距離になるってわかったとき、正直、自信はなかった。

「離れても気持ちは変わらないって言ってくれるけど、やっぱり寂しいよ」

そんなふうに電話で漏らしたとき、彼は少し黙ったあと、
「俺だって寂しいよ。でも、寂しいって気持ちがあるってことは、それだけ大事ってことじゃない?」
って、まっすぐな声で言ってくれた。

スマホ越しの声だけじゃ足りない夜。
仕事で疲れてるのに「声だけでも聞かせて」って甘えたこともあった。
会えない日々は、時に想像よりも残酷で、LINEの既読がつかないだけで不安になったり、
「ほんとにこのままでいいのかな」って、心が揺れることも少なくなかった。

だけど、月に一度の再会が、何よりのご褒美だった。
新幹線で3時間半。やっと着いた駅の改札で、彼が手を振って迎えてくれる瞬間は、何度経験しても泣きそうになる。

ある冬の日。
雪が積もった彼の街をふたりで歩いた。
「寒いね」と言いながら、彼の手をそっと握ったら、
「もっと早く繋いでくれたらよかったのに」って笑われて。

そのとき思った。
ああ、たとえ一緒にいる時間が短くても、こうして笑い合えるなら、やっていけるかもしれないって。

私たちは、たくさんの“我慢”と“努力”と“信じること”で、遠距離恋愛を続けた。
会えない時間があるからこそ、伝える言葉を大切にした。
「好き」や「会いたい」が、メールじゃ足りなくて、手紙を書いたこともある。

1年目の記念日は、ちょうど彼の仕事が忙しくて会えなかった。
でも、「今度会えたとき、ちゃんと祝おう」って約束して、
その2週間後、小さなホテルの部屋でケーキを半分こした。

そして、2年目の春。
私の就職先が、たまたま彼の勤務地の近くに決まった。
運命なんて、信じたことなかったけど、そのときばかりは「奇跡ってあるんだ」って思った。

「これからは、毎週末会えるね」
そう言って手を握ってきた彼の手のひらは、前より少しだけ温かくて、頼もしく感じた。

今でも、駅の改札を見ると、あの日の彼の背中を思い出す。
そして、あの距離を越えた日々があったからこそ、今があるんだって、胸の奥がじんわりする。

遠距離恋愛は、簡単じゃない。
でも、簡単じゃなかったからこそ、本気で向き合えた。
時間も距離も、きっと愛し方のひとつなのだと思う。

あの2年間は、私にとって恋と人を信じることを教えてくれた、大切な記憶です。