高2の梅雨。
雨がしとしと降る放課後、校門の前で立ち尽くしている男子がいた。クラスの席が近い、佐々木くん。
ちょっと無口で、でもたまにすごく笑うのが印象的な人。
「傘…忘れたの?」
そう声をかけたら、佐々木くんが気まずそうに笑った。
「うん。まぁ、降り始めたの授業中だったし」
「うち、駅まで一緒だけど…入る?」
自分で言っておいて、内心めちゃくちゃ心臓バクバクしてた。
でも彼は一瞬驚いたあと、小さく「ありがとう」って言って私の隣に並んできた。
駅までの道、私の肩はどんどん濡れていく。
けどそれより、彼の腕がすぐそこにあること、ほんのり濡れた制服の匂い、彼の息づかい……全部が気になって、なんか頭が変になりそうだった。
「…ごめん。俺、濡らしてるよな」
「いいの。どうせ家帰ったら着替えるし」
「……そっか。優しいな、君は」
“君は”って言われたの、なんか変な感じで、でもちょっと大人っぽくてドキッとした。
信号待ちのとき、彼がふいに私の方を見た。
「俺、君の声好きだよ。落ち着く」
「えっ…急に、なにそれ…」
顔、真っ赤だったと思う。
でもその日から、彼は毎日私に「また帰り一緒に帰る?」って聞くようになった。
“あの日傘を忘れてくれてありがとう”って、今になって思う。
あの一歩がなかったら、私はこの気持ちを知らなかった。
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