あの人のことを、初めて「好きかもしれない」と思ったのは、大学2年の春でした。
サークルの新歓でたまたま隣の席になって、最初はただ「話しやすい人だな」って思ってた。
でも、何度か飲み会や活動を一緒にするうちに、彼の笑い方とか、話の聞き方とか、
誰にでも気さくに優しいところとか──いちいち気になるようになっていきました。
「◯◯さんってさ、いつも周り見てるよね」
「え、そんなことないよ。俺、けっこう抜けてるし」
って、あの時のやりとり。
なにげない会話が、私の中では小さな宝物みたいに残ってて。
その頃から、LINEのやりとりも少しずつ増えていって、彼の投稿を見るたびにドキドキして。
でも、彼が誰かと付き合ってるって話は聞かなくて。
「もしかしたら、可能性あるかも…?」
なんて、勝手に期待してた。
夏が終わって秋が来た頃、私は思いきって、自分の気持ちを伝えることにした。
いきなり告白なんて無謀かなって思ったけど、それでも黙ってるのはもう無理だった。
いつも帰りに使ってる、大学近くの公園のベンチ。
「ちょっとだけ話したいことあるんだけど…いい?」
って切り出したとき、彼はちゃんと真剣に私の目を見てくれた。
「…私、◯◯くんのことが好きです。付き合ってほしい」
心臓の音が、耳の中で暴れてるみたいだった。
でも、彼の返事は、想像よりも穏やかで、やさしかった。
「ありがとう。…すごく嬉しい。でも、ごめん。今は、恋愛のこと、ちゃんと考えられる余裕がないんだ」
ちゃんとした理由だった。曖昧に濁さずに向き合ってくれたのが、逆に泣きそうになるくらいありがたかった。
そのあと、気まずくなるかなって思ったけど、彼はいつも通り接してくれて。
でも私は、少しだけ距離を置くことにした。
一方的に「好き」って思ってた自分を、少し冷ましたくて。
それでも、不思議と後悔はなかった。
ちゃんと伝えられてよかった、って思った。
自分の気持ちに嘘をつかずに、向き合えたことが、私の中ではすごく大きな意味があったから。
それからしばらくして、サークルの仲間と行った卒業旅行の帰り道。
飛行機の中、彼が隣の席でぽつんとつぶやいた。
「◯◯さんに言われたときさ、実はちょっと嬉しくて、でもすぐ返せなかった自分が情けなくて」
それ以上、深くは話さなかったけど。
あの時の一言だけで、私はまたあの気持ちが「悲しみ」じゃなくて「優しさ」に変わっていたことを知った。
恋って、叶うか叶わないかだけじゃない。
誰かを本気で好きになれたこと、その気持ちをちゃんと届けられたこと。
それだけで、十分に意味があるんだって、あの恋が教えてくれた。
今は別々の道を歩いているけど、ふとしたときに思い出す。
彼の笑い声や、ベンチで交わした言葉。
そして、あの時の私の精一杯の勇気。
フラれても、まったく後悔なんてしてない。
あれは、私にとってちゃんと意味のある、本気の恋だったから。