「ごめん、好きな人ができたの」
彼女からそう言われたとき、頭が真っ白になった。
3年付き合った彼女とは、大学時代に出会い、社会人になってからもなんとか時間を作って会っていた。
遠距離でもなければ、大きなケンカもなかった。だから、突然の別れ話は、まるで寝耳に水だった。
その日は、都内の小さなレストランだった。
いつも通りの笑顔で現れた彼女が、食後に急にまじめな顔になったのを、今でもはっきり覚えている。
言葉を選びながら、でも迷いのない口調で別れを告げる彼女を見て、
「ここで引き止めても、もう戻らないんだ」と、どこかで悟っていた。
家に帰ってから、何度も彼女との写真を見返してしまった。
スマホの中の笑顔たちは、何一つ変わっていないのに、今はもう、どこにも繋がっていない。
最初の1ヶ月は、本当にきつかった。
食欲もなく、夜も眠れず、何をしても楽しくなかった。
仕事に行っても、ぼんやりしてしまって、上司に心配されるほどだった。
「もう、恋愛なんてしたくない」
そう思って、友達の誘いも断り続けた。
でも、不思議なことに、時間って本当に少しずつ、心を癒してくれる。
ある日、大学時代の男友達に無理やり飲みに連れ出された。
「女なんていくらでもいるだろ!」なんて軽口に苦笑しつつも、
彼が本気で心配してくれてるのが伝わってきて、なんだか少しだけ気持ちがほぐれた。
その帰り道、ふと空を見上げたら、雲の隙間から月がきれいに見えていた。
「そういえば、こういうの、彼女とよく見てたな」って思って、
でも次の瞬間、少しだけ「あいつじゃなくても、誰かとまた見られるかも」って思えた。
それが、立ち直りのきっかけだった。
それからは、自分の時間を大切にするようになった。
前から興味のあったギターを始めてみたり、会社の同期とランチに行ってみたり。
彼女との思い出で埋まっていた日常を、少しずつ「自分だけのもの」に塗り替えていった。
完全に忘れられたわけじゃない。
今でも、ふとした瞬間に彼女の言葉や笑顔を思い出すことはある。
でも、それを「もう終わったこと」と受け止められるようになった。
季節が一巡したころ、新しい人と出会った。
最初は、また傷つくのが怖くて、一歩を踏み出せなかったけど、
その人が笑ったとき、なんだか心の奥があたたかくなって。
「あ、また誰かを好きになれるかもしれない」って、素直に思えた。
失恋から立ち直るのに、時間はかかったけど、あの経験がなかったら、
自分の弱さにも強さにも気づけなかったと思う。
今はまだ新しい恋が始まったばかりで、不安もあるけど、
あの別れがあったからこそ、今の一歩がちゃんと意味を持ってる。
恋って、終わるときは本当に苦しくて、
でも、その分だけ、新しく始まる恋は、きっともっと優しくなれる。
これが、僕が失恋から立ち直るまでにかかった、等身大の時間の話です。