私は、いわゆる「アラサー女子」。周りの友達が次々と結婚していく中、焦りを感じつつも、なかなか理想の相手に出会えずにいた。そんな時、友人の勧めもあって、思い切ってマッチングアプリを始めてみたんだ。正直、最初は半信半疑だったけれど、これが私の運命の出会いになるなんて、その時の私は知る由もなかった。
たくさんのプロフィールを眺める中で、彼の写真が目に留まった。爽やかな笑顔で、趣味も私と共通するものが多かった。思い切って「いいね」を送ってみると、彼からもすぐに「ありがとう」が返ってきた。メッセージのやり取りを始めてみると、彼の文章からは、優しさやユーモア、そして誠実さが溢れていて、会う前からどんどん彼に惹かれていった。これが、いわゆるオンラインからリアルへの第一歩。
そして、ついに迎えた初めてのデートの日。待ち合わせは、少しおしゃれなカフェ。緊張で前日はほとんど眠れなかったし、何度も鏡の前でデート服をチェックした。「写真と違う人だったらどうしよう」なんて不安もあったけれど、カフェの入り口で彼を見つけた瞬間、そんな不安は全部吹き飛んだ。
彼は、写真で見た通りの、いえ、写真よりもずっと素敵な人だった。スラリとした背丈に、落ち着いた雰囲気。目が合った瞬間、彼が「〇〇さん?」って優しく微笑んでくれた。その笑顔に、私の心臓はドクンと大きく鳴った。まさに胸キュンの予感。
カフェでおしゃべりする時間は、あっという間に過ぎていった。共通の趣味の話で盛り上がったり、仕事の悩みを打ち明けたり。まるで何年も前から知っていたかのように、自然に話ができたんだ。彼が時折見せる真剣な眼差しや、楽しそうに笑う時のくしゃっとした笑顔に、どんどん引き込まれていった。これが「理想の相手」ってことなのかな、って、心のどこかで感じ始めていた。
カフェを出て、私たちは近くの公園を散歩することにした。夕焼けが空をオレンジ色に染めていく、ロマンチックな時間。隣を歩く彼の腕が、私の腕にかすかに触れるたびに、電流が走るようなドキドキを感じた。こんな風に、誰かの隣を歩くのは、本当に久しぶりだった。
公園のベンチに座って、しばらく黙って夕焼けを眺めていた。沈黙が心地よくて、私は彼の隣にいられるだけで幸せだった。その時、彼が私のほうを向いて、少し照れたように言った。
「あのさ、俺…初めて会った気がしないんだ。もっと話したい。これからも、会ってくれる?」
彼の真っ直ぐな言葉に、私の心臓は飛び跳ねた。もう、私の中では「彼氏」になってほしいと願うほど、彼に惹かれていたから。私は何も言えなくて、ただ小さく頷いた。
すると、彼が私の手をそっと掴んだ。彼の掌は、私よりも少し大きくて、温かかった。指の節が、私の指の隙間にゆっくりと絡んで、そして、しっかりと私の手を握りしめてくれた。彼の温かさが、私の手のひら全体にじんわりと伝わってきて、胸の奥がキュンと締め付けられた。
そして、彼が私の顔を、ゆっくりと引き寄せた。夕焼けに染まる彼の顔が、私の目の前に近づいてくる。彼の吐息が、私の唇にかかる。甘くて、少しだけ石鹸のような、爽やかな匂いがした。
「好きになってもいいかな…?」
彼の囁くような声が、私の耳元で響いた。そして、柔らかいものが、私の唇に触れた。
ふわりと、彼の唇が私の唇に重なる。それは、想像していたよりもずっと優しくて、温かくて、そして、甘かった。初めてのキス。私の全身が、まるで彼に溶けていくみたいだった。夕焼けの空の下で、私たちは、まるで映画のワンシーンのようなキスを交わした。
マッチングアプリで始まった恋が、こんなにも甘くて、ロマンチックな「シンデレラストーリー」の予感をくれるなんて。彼の温もりと、初めてのキス。私の心は、この出会いから、新しい未来へと向かって動き始めたんだ。これが、私の恋人募集の卒業。