潮風が髪を撫でる、夏の海辺の街。白い砂浜と青い海が広がるこの場所で、私たちはいつも一緒にいた。小さな頃からずっと一緒の、ユウキ。砂の城を作ったり、貝殻を拾ったり、日が暮れるまで海で遊んだり。私たちにとって、海は遊び場で、ユウキはいつも隣にいる、当たり前の存在だった。
高校生になった今年の夏、私たちは久しぶりに二人でこの海に来た。進路の話をしたり、最近あった面白いことを話したり。波の音が、私たちの言葉を優しく包み込んでいく。でも、なぜだろう。今日は、いつもと少し違う気がした。
ユウキが、拾った貝殻を私に見せて、「これ、きれいだろ?」って笑った。彼の笑顔は、昔から変わらない、太陽みたいに明るい笑顔なのに、今日はなんだかドキッとしてしまった。彼の少し焼けた肌に、太陽の光が反射して、キラキラと輝いている。
帰り道、私たちは堤防の上を並んで歩いた。夕焼けが空をオレンジ色に染めて、海も赤く染まっている。風が強くなって、私の髪が揺れると、ユウキが心配そうに「大丈夫か?」って声をかけてくれた。そして、私の肩にそっと手を添えてくれたんだ。
彼の温かい手が、私の肩に触れた瞬間、心臓がドキドキッと跳ねた。いつもなら何とも思わないはずなのに、今日は彼の優しさが、なんだか特別なものに感じられた。彼の指の感触が、制服の薄い生地越しに伝わってくる。潮風に乗って、彼の汗と、少しだけ日焼け止めの混じったような、そんな匂いが鼻をくすぐった。
堤防の端まで来て、私たちは立ち止まった。目の前には、どこまでも広がる海。夕焼けが、水平線にゆっくりと沈んでいく。その美しい光景を、私たちは二人で黙って見つめていた。
ふと、ユウキが私のほうを向いて、少し照れたように言った。「なぁ…」
彼の声が、夕焼けの音に紛れて、少し小さく聞こえた。私の心臓は、ドキドキと高鳴る。何を言われるんだろう。期待と不安が、同時に押し寄せてくる。
「…また、来年も一緒に、この海に来たいな」
彼はそう言って、少しだけ目を逸らした。ただそれだけの言葉なのに、なぜか私の胸は、熱くなった。来年も、また一緒に。それは、当たり前の約束だと思っていたけれど、今日の彼の言い方は、なんだかいつもと違う気がした。
波の音が、いつもより大きく聞こえる気がした。夕焼けが、私たちの頬を赤く染めている。隣にいるユウキの存在が、急に特別なものに感じられて、私はドキドキしながら、小さく頷いた。
潮風が運んだ、幼馴染との小さな予感。いつも隣にいたユウキとの関係が、この夏の海で、ほんの少しだけ変わろうとしているのかもしれない。夕焼け色の海を見つめながら、私はそんな予感に、胸を高鳴らせていた。