傘がなくて立ち尽くしてた私に、さりげなく差し出されたあの傘

予報では降らないって言ってたのに、放課後の空はどんよりと曇っていて、校門を出た瞬間にぽつぽつと雨が降り出した。

「うそでしょ……」

私は傘を持ってなかった。近くのコンビニまで行くにも、濡れるしかない。でも制服は洗ったばかりで、できれば濡らしたくなかった。

しばらく校門の屋根の下で空を見上げていたら、誰かが傘を差し出してきた。

「入る?」

声をかけてくれたのは、隣のクラスの相馬くんだった。そんなに話したこともないのに、なんで覚えててくれたのかわからない。

「……ありがとう」

一緒に傘に入って歩き出したとき、雨音がすごく静かに聞こえた。気まずさよりも、妙に落ち着いた空気が流れていた。

「帰る方向、一緒?」

「うん、多分」

本当は違った。でも、もう少しこのままでいたかったから、つい嘘をついた。

「……ってかさ、あんま話したことなかったよね」

「うん、でも体育祭のとき、応援団やってたでしょ?見てたよ。声、すごかった」

彼は照れくさそうに笑った。

小さな屋根の中で、肩が少しだけ触れてた。ドキドキするけど、逃げたくなかった。こんなに誰かと近いのって、初めてだったかもしれない。

「雨、もうすぐ止みそうだね」

「そうだね……でももうちょっと降っててもいいかな」

そんな言葉を、口にしてしまった自分に驚いた。けど彼は笑って、「俺も」って言ってくれた。

分かれ道で、私は本当の道を選んだ。

「ここまでで大丈夫、ありがとう」

「うん。また学校で」

傘を返すか悩んでいたら、彼がぽんと押し戻してきた。

「貸しとく。明日、返して」

明日も、話せる理由ができたことが、すごく嬉しかった。

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