好きで好きで、泣いて笑って──そして、あなたと結婚しました
その人を、好きになったのは──たぶん、最初に名前を呼ばれた日。
「理奈」
その響きが、空気を震わせて私の胸の奥に届いたとき、心が小さく跳ねた。
気づいたら、毎日その人のことを探すようになっていた。
朝、会えるだけでうれしかった。 夜、名前を思い出すだけで眠れなくなった。
でもね、好きになるって、楽しいだけじゃない。
ある日、ふたりきりで話したとき──冗談みたいに言われたの。
「理奈ってさ、恋愛とか苦手そうだよね」
心がキュッて音を立てた。笑ったふり、うまくできなかった。 その夜、ひとりで泣いた。名前を呼んでもらった嬉しさも、 その一言で、ぜんぶかき消された気がして。
それでも、諦められなかった。
だって……こんなに好きになったの、初めてだったから。
誕生日に、意を決して手紙を書いた。 渡すとき、手が震えて文字がにじんだ。 返事は──なかった。
……でも、数日後。
「手紙、ありがとう」 たったそれだけ、LINEで送られてきた文字に、私はまた泣いた。
そのあとも、何度も壁にぶつかった。 すれ違って、嫉妬して、泣いて、遠ざかって…… でも、何度も戻ってきてくれた。
「俺、理奈のこと……好きかもしれない」
“かもしれない”で、こんなに嬉しかったのは生まれて初めてだった。
それからの毎日は、魔法みたいだった。 一緒にごはん食べて、映画見て、時々ケンカして── 「好き」が当たり前になるのが、こんなにも愛しいなんて。
そして、季節が三つ巡ったある日。
帰り道、桜が舞う坂道で──彼が突然立ち止まった。
「……理奈」
「なに?」
「……俺と、結婚してください」
返事なんて、考えるまでもなかった。
泣きながら、笑いながら、何度もうなずいた。
この人でよかった。 この恋でよかった。
好きで、好きで、泣いて笑って── そして私は今、あのとき名前を呼んでくれた人の、 “妻”になった。
あの声が、毎日私の名前を呼んでくれる。 それだけで、ずっと泣けるくらい幸せ。