高3の秋。
高校生活最後の文化祭が近づいていて、
クラスではなんとなく盛り上がりつつ、
でもどこか「これが最後か」っていう雰囲気も混じってた。
うちのクラスは「お化け屋敷」に決まった。
正直、俺はどっちかというと「見てる側でいいな」ってタイプだったし、
準備に張り切る性格でもない。
でも、なんでか実行委員になった。
というか、なぜか推薦されて、「じゃあ…」って流れで。
そのとき、もうひとりの実行委員が——
中嶋さんだった。
同じクラスだったけど、あんまり話したことはなかった。
いつも静かで、あまり表情が読めないタイプ。
ただ、ちょっとしたときに笑うと、その笑顔が印象に残る子だった。
「じゃあ、装飾と進行の担当、分けようか」
「うん、どっちがいい?」
話すうちに分かったのは、
中嶋さんが意外としっかりしてて、
しかもたまに抜けてて、そこが可愛いってこと。
準備が進んでいくにつれて、
放課後、一緒に残る時間も増えていった。
「これ、曲がってない?」
「いや、大丈夫じゃない? 俺の目が曲がってるなら別だけど」
「…じゃあ、ちょっと右上げるね」
脚立に乗って装飾を貼ってるとき、
彼女がバランスを崩して、とっさに支えたことがあった。
「わ、ごめん!」
「大丈夫。けがない?」
そのとき、彼女の肩に手を置いたままで、
ちょっとだけ見つめ合って、
お互いに照れ笑いした。
それがきっかけだった気がする。
その日から、彼女のことが少しずつ気になってきた。
準備の合間、2人でアイスを買って食べたこと。
一緒にポスターのデザインを考えて、ふざけて描いた変なキャラで笑い合ったこと。
全部が、なんか特別に感じた。
前日の夜。
遅くまで残って準備して、教室には俺と彼女の2人だけ。
「…なんか、寂しいね。明日で終わりか」
「うん。でも、ちょっと楽しみ」
机に並べた小道具を見ながら、彼女がぽつりと言った。
「〇〇くんと、いっぱい話せてよかった」
「え?」
「実はさ、1年のときからちょっとだけ、気になってたんだ」
俺の心臓が跳ねる音、絶対聞こえてたと思う。
「え、マジで?」
「うん。けど、話しかけるきっかけなかったから…」
一瞬の沈黙のあと、俺はゆっくり答えた。
「俺も、最近すごく気になってる。っていうか…たぶん好き」
彼女が顔を少しだけ伏せたあと、ゆっくりと微笑んだ。
「…うれしい」
教室の蛍光灯が少しだけチカチカしてて、
誰もいない放課後の教室って、なんでこんなにドラマみたいなんだろう。
帰り道、彼女と並んで歩いた。
「手…つないでもいい?」って、勇気を出して言ったら、
彼女は黙って右手を差し出してくれた。
あのときの手のぬくもり、今でもちゃんと覚えてる。
文化祭当日、2人でクラスTシャツを着て、
「次のグループご案内しまーす」なんて言いながら、
なんか妙に照れてしまったけど、幸せだった。
周りには付き合ったことはまだ言ってない。
でも、俺たちはもう、たぶん大事な一歩を踏み出してた。
あの秋の放課後、
準備のペンキの匂いも、
色とりどりの画用紙も、
彼女の笑った横顔も——
全部が、大切な思い出になった。
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