その人の名前を、最後に口にしたのは──高校の卒業式だった。
「じゃあ、またね」って笑った君の顔が、あのときの私の世界の終わりみたいだった。
それから私は、わざと忘れたふりをして生きてきた。新しい恋をして、忙しいふりをして、
君の声も、仕草も、ぜんぶ、もう記憶の底に沈めたつもりだった。
……10年後、同窓会の通知が届くまでは。
「来ると思ってなかった」
再会した君は、全然変わってなかった。
でも、私の心は──たった一言で、全部あの頃に戻った。
「変わってないね」って言った君に、私はなんて返したか覚えてない。
ただ、指先が震えていた。目が合うのが怖くて、でも見つめられると息ができなかった。
あの夜、2次会の帰り道。
駅までの坂道で、君がふいに足を止めた。
「高校のとき、俺……ずっと言えなかったことがあった」
「……なに?」
「俺、お前のこと、ずっと好きだった」
その瞬間、ずっと止まっていた何かが動き出した気がした。
答えなんていらなかった。だって、私の心は10年前から──ずっと君のものだった。
その夜、眠れなかった。
懐かしさと、後悔と、止まらない嬉しさに、心がぐちゃぐちゃだった。
それから何度も連絡を取るようになって、会うようになって、
たまに遠回りして、でもまた会えて。
今、私たちは同じ部屋で、同じ毛布の中で、あの頃より深く繋がってる。
忘れたふりをしてた初恋。
それは、ちゃんと「運命」になって、私の元に戻ってきた。
──10年越しの恋は、今も、私を毎日泣かせて、笑わせてくれる。