ライブチャットで出会った彼女と、初デートで心が近づいた日の話

正直に言うと、最初はただの暇つぶしだった。
夜遅く、なんとなくスマホを触っていて、たまたま目に入ったライブチャットアプリ
特に期待もせずに入ったそのルームで、彼女と出会った。

画面越しに笑って話していた彼女は、自然体で、どこか安心感があった。
きれいな人だなと思ったけど、それ以上に、「作ってない感じ」が心に残った。

「こんばんは、初めてですか?」
「うん、ちょっとだけ覗いてみようかなって」

そんな会話から始まって、気づけば1時間以上も話し込んでいた。
仕事のこと、趣味のこと、地元の話。特別な共通点があったわけじゃないけど、不思議と沈黙が怖くなかった。

何度かライブでやりとりしていくうちに、「LINEにする?」と彼女が言ってくれて。
そこからは、もう普通の連絡を取り合う関係になった。

毎晩、「今日もおつかれさま」って送ってくれる彼女のLINEが、少しずつ自分の中で特別なものになっていって、
ある日ふいに、「今度、会ってみない?」と僕から誘った。

「え、ほんとに?」
「うん。…会って話してみたいって、思ってる」

少しの間があってから、「じゃあ、来週の土曜ね」って返ってきたとき、
胸の中で小さく花火が上がったような気がした。

当日。待ち合わせ場所は、渋谷の人混みの中。
ドキドキしながら改札の前に立っていたら、向こうから手を振ってくる彼女が見えた。
画面越しの彼女よりも、ずっと柔らかくて、あたたかい空気をまとっていた。

「お待たせ」
「いや、俺が早く着きすぎたかも」

そんな風に自然と会話が始まって、どこかホッとした。

まずはランチをして、そのあとは彼女が行ってみたいって言ってた雑貨屋をのぞいて。
お互いのことをあらためて知る時間が、なんだかすごく新鮮だった。

「リアルで会うと、なんか…緊張するね」
「うん。でも、変な意味じゃなくて、ちゃんとドキドキしてる」

彼女のその言葉に、思わず笑ってしまった。
ライブチャットで何時間も話してたのに、実際に隣を歩いてるだけで、こんなに感覚が違うなんて。

夕方になって、公園のベンチに腰かけた。
落ち着いた空気の中で、ふたりとも少し口数が少なくなっていた。

「…ねえ」
「ん?」

「会ってよかったって、思ってる」

ぽつりとつぶやいた彼女の横顔を見たとき、
「俺もだよ」って、自然に言葉が出てきた。

そのまま、彼女が僕の方を見て、小さくうなずいた。
一瞬の間があって、僕はそっと手を伸ばして、彼女の手を握った。
冷たくない、ちょうどいいぬくもりだった。

ほんの数秒の沈黙のあと、彼女が目を閉じたから、
僕はそっと顔を近づけて、初めてのキスをした。

長くはなかったけど、静かで、優しいキスだった。
まるで画面越しでは届かなかった距離を、やっと埋められたような気がした。

ライブチャットでの出会いに、不安がなかったわけじゃない。
でも、ちゃんと向き合って、時間を重ねて、会って確かめたこの気持ちは、
どこで出会ったとか、関係ないと思えた。

今では彼女は、ライブじゃなく、僕の毎日の中にちゃんといる。
そしてあの日交わしたキスは、今でも心の奥に、やわらかく残っている。