その日も、断られるつもりでいた。
三度目の告白は、春の終わりだった。 風がやけに温くて、街路樹の緑が眩しかったことだけは覚えている。あの時も、君は困ったように笑って、首を横に振った。だけど、ちゃんと目を見て、返してくれた言葉は、僕の中で小さな希望になっていた。
「ありがとう。でも、もうちょっと友達でいてほしい」
“もうちょっと”って、どれくらいだろう。そんなことを考えながら、僕はまた君の隣で笑って過ごした。
出会いは、サークルの新歓だった。お互いに人見知りで、最初は他人の会話に相槌を打つだけだった。それでも、不思議と話すテンポが似ていて、気づけば一緒に帰るようになった。
「〇〇って、好きな人いるの?」
そんな風に聞けるようになったのは、夏の終わりだった。 君はちょっとだけ驚いた顔をして、「……いるよ」と言った。あの瞬間、心臓が落ちるような音がした。誰だろう、って思ったし、自分じゃないんだ、って思った。でも、なんにも言えなかった。
その後、秋が来て、冬が来た。 一度目の告白は、秋の文化祭のあとだった。酔った勢いなんかじゃなくて、ちゃんと伝えようと思った。
「俺、〇〇のこと好きなんだ」
君は、静かに黙ったまま、コップの水を見ていた。長い沈黙のあと、「……ありがとう」とだけ言って、それ以上は言わなかった。
そのあとも、関係は壊れなかった。君は普通に話しかけてくれて、僕もいつも通りに笑って返した。だけど、何かが変わっていた。どこか遠慮が生まれて、でも、それを壊したくなかった。
二度目は、冬の終わり。バイト帰りのコンビニ前で、また伝えた。「まだ、好きだよ」って。それでも君は、「うれしいけど、ごめんね」と言った。
それでも、好きだった。
そして、春が来た。三度目の告白。 もう、さすがに諦めた方がいいのかなと思った。でも、君の「もうちょっと」という言葉が、僕を止めた。
夏のある日、君がぽつりと言った。 「好きって、簡単じゃないんだね」
僕は、「うん」とだけ返した。君の過去を、少しだけ聞いた。昔、誰かに裏切られたこと。信じてた言葉が、嘘だったこと。そのせいで、「好き」が信じられなくなったこと。
だから僕は、君が笑うたび、少しずつ信じてもらえるように、そばにい続けた。
四度目の告白は、特別な場所でも、特別な日でもなかった。駅前のカフェで、アイスティーを飲みながら、ふと目が合ったときだった。
「ねえ、俺さ……まだ、好きなんだ」
君は、ふっと笑った。そして、今までみたいに言葉を探すような仕草のあとで、こう言った。
「……うん。わたしも、好き」
その一言に、今までの全部が報われた気がした。 震える手を隠すように、僕はテーブルの下で拳を握った。
好きって、何度言っても届かないものだと思ってた。でも、君にはちゃんと届いていたんだ。
それから、季節がいくつも過ぎたけど、あの時の気持ちはずっと変わらないままだ。
四度目の“好き”に、君が頷いてくれた日。 あれが、僕たちの始まりだった。