「友達でいるって、こんなに苦しいんだ」って気づいたあの日から、僕はもう笑えなかった。

大学のサークルで出会ったSとは、何でも話せる友達だった。趣味も合うし、ノリも似てる。まわりからは「仲いいね」なんてからかわれるくらいだったけど、お互いに“恋愛対象じゃない”と軽口を叩ける関係だった。

付き合うとか、そういうのとは違う。
だけど、気づけば誰よりもLINEの履歴が長くて、悩んだときに真っ先に顔を見たくなるのはいつもSだった。

ある日、Sから「好きな人ができた」と言われた。
それは、僕の知らない別の学部の男の子で、どうやら最近よく一緒に帰ってるらしい。

「あーあ、私もついに恋しちゃったかも」
そう言って笑うSの顔を見て、胸の奥がチクリと痛んだ。

応援しなきゃいけないと思った。
だって“友達”なんだから。
だけど、LINEの返信が減ったり、急に予定が合わなくなったりするたびに、自分でも驚くほど落ち込んでいた。

そんなある日、サークルの打ち上げ帰りに、たまたまふたりきりになった帰り道。
「ねぇ、〇〇くんって、私のことどう思ってるの?」
酔っているのか、いつもよりSの声は少し弱かった。

僕はしばらく黙って、それからゆっくりと言った。

「…ずっと、好きだったよ。でも“友達”って言われたときに、止まっちゃったんだ」
Sは驚いたように僕を見て、それからふっと笑った。

「ごめんね。気づいてたけど、気づかないフリしてた」
その一言で、僕の中にあった何かが崩れた気がした。

それでも僕たちはその夜、何もなかったように別れた。
それ以降、少しずつ距離が空いていった。連絡は減り、会う機会もなくなっていった。

でも後悔はしていない。
友情の仮面をかぶって、気持ちを隠し続ける方が、もっと苦しかったから。

“友達”って便利な言葉だ。
だけどその言葉に隠していた想いが本物だったとき、もう元には戻れない。
それでも、ちゃんと伝えられた自分を、少しだけ誇りに思いたい。