まさか、プロフィールの“好きなカレー”から結婚までいくなんて思ってなかった。

30歳を過ぎてから、周囲の結婚報告が増えはじめた。
焦っているわけじゃないけれど、ふとした瞬間に孤独を感じるようになったのも事実だった。

会社と家の往復。休日は寝溜めか、たまの友人とのランチ。
そんな日々のなかで、ふと登録した婚活アプリ。最初は半信半疑で、「たぶん向いてない」と思いながらも、いくつかのプロフィールを眺めた。

その中に、気になる人がいた。
年齢はひとつ上、職業は同じ業界。趣味は料理。そして、プロフィールの最後に書かれた「特に、スパイスから作るカレーが好きです」の一文。

その言葉に、なぜか心が動いた。私も料理が趣味で、特にカレーにはちょっとこだわっていたから。

メッセージを送ってみた。

「スパイスからカレー作るって本気の人ですね。ちなみに、一番好きな組み合わせは何ですか?」

返ってきたのは、「フェンネルとカルダモン。香りで一日幸せになれるんですよ」
なんだか、そのやりとりだけで、空気が変わった気がした。

そこから、食の話を中心にメッセージが続き、2週間後に初めて会った。

会ってみると、気取らないけど丁寧な人だった。話し方も、間の取り方も、なぜか落ち着く。

何度か会ううちに、恋愛感情というより、「この人といると、生活が静かに満たされるかも」と思うようになった。

交際に発展するのも、結婚の話が出るのも、自然な流れだった。

交際8か月目のある日、一緒に作ったカレーを食べながら彼が言った。

「最初のメッセージ、あれ本気で嬉しかったんだ。まさか“フェンネル”に反応してくれる人がいるとは思わなかったから」

私は笑って答えた。

「こっちこそ、まさか“フェンネル”で人生が変わるとは思わなかったよ」

婚活って、効率や条件ばかりに目がいきがちだけど、
本当に心が動く瞬間は、意外なところにあるのかもしれない。

たとえば、たったひとことの共通点。
それが、これからの人生を変えるきっかけになることも、あるんだと思う。