ひとりでテーマパークに行くなんて、昔の私だったら考えもしなかった。
でも、友達との予定が急にキャンセルになって、チケットも取ってしまっていたし──
「一人でも楽しんでやる!」って、ちょっとした意地で足を運んだのが、すべての始まりだった。
場所は、関西の某リゾートパーク。
平日だったせいか、思ったよりも人は少なくて、ひとりでも意外と気まずくなかった。
ゆっくりアトラクションを回って、ふとベンチに座ってソフトクリームを食べていたときだった。
「それ、期間限定の味ですよね? おいしいですか?」
突然隣から声をかけられて、少し驚いた。
見ると、黒いキャップに白Tシャツの、年上っぽいけど柔らかい雰囲気の男性が立っていた。
「え、あ…はい。甘すぎなくて美味しいですよ」
「ですよね。実は、迷ってたんです」
そんな他愛もないやりとりから、自然と会話が弾んで、
「ひとりなんですか?」
「はい。予定が流れてしまって」
「え、奇遇…僕もなんですよ」
まさか、こんな場所で“ひとりパーク仲間”と出会うとは思わなかった。
そこから、自然な流れで「よかったら一緒に回りませんか?」と誘われた。
正直、少しだけ警戒心もあったけど、彼の雰囲気にどこか安心感があって、私はうなずいていた。
アトラクションの列に並びながら、仕事のことや趣味の話、好きな映画のことまで話した。
不思議と、会ってまだ数時間しか経っていないとは思えないくらい、自然に笑えていた。
「なんか、今日ここに来てよかったな」
そう呟いた彼の横顔を見ながら、私も同じことを思っていた。
夕方になり、パークの中心でイルミネーションが点灯し始めたころ。
「最後に、観覧車でもどうですか?」と誘ってくれた。
ゆっくりと夜景が広がっていく空間で、私は少しだけ緊張していた。
「なんか、今日一日がウソみたいですね」
「うん。でも、こういう出会いって案外、忘れられないかもしれない」
観覧車が頂上に差し掛かったころ、彼がそっと言った。
「…もし、迷惑じゃなかったら、また会いたいです」
心臓が跳ねる音が、ゴンドラの静けさに響いている気がした。
「…迷惑どころか、私もそう思ってた」
その後、連絡先を交換して、パークの外で手を振った瞬間の空気は、たぶん一生忘れられない。
夜風が少し冷たくて、でも心の中はぽかぽかと温かくて。
それから何度か会うようになって、彼は関西に転勤で来ていたこと、私と年は3つ違いだったこと、
仕事は忙しいけれど、休日に一緒に出かける時間をすごく大切にしてくれること。
そんなひとつひとつが、だんだんと私の「日常」になっていった。
あの日、「一人でも行ってみよう」と思えたこと。
そして、彼に声をかけてもらえたこと。
全部が重なって、今の私たちのはじまりになった。
恋愛って、予定通りにはいかないものだと思っていた。
でも、予想外のほうが、思い出に残るし、本気で大切にしたくなることもある。
このテーマパークでの出会いは、間違いなく私の人生をちょっとだけ変えてくれた。
今も彼と、同じ場所にもう一度行こうって計画中です。
次はふたりで、最初から。