ネトゲのボイチャで毎晩話してた彼に、初めて会った日の緊張と、ときめきと。

「おつかれさまー」
「おつ。今日も来てくれてありがと」

ヘッドセット越しに聞こえるその声が、私にとっては一番安心できる音だった。

私は高校3年生。受験勉強の合間、夜に1〜2時間だけログインしていたのが、MMORPGの『Varia Online』だった。
きっかけは兄のおさがりのPCで、ちょっとだけ触ってみたら世界観にどハマり。
中でも“ギルド”という小さなチームの中で、毎晩ボイチャでパーティプレイをしていたのが、私の一番の楽しみだった。

そのギルドでリーダーをしていたのが「Kuro」。
最初はただの上手いプレイヤーだと思っていたけど、VCで喋るようになってから、どんどん気になる存在になっていった。

落ち着いた声。さりげない気配り。
「ちょっと無理してない?」って気づいてくれるところ。
チャットでは軽い感じなのに、通話になると急に大人っぽくなるギャップもずるかった。

「なぁ、今度リアルで会ってみる?」

ある日、ダンジョン周回が終わったあとの雑談中に、Kuroが言った。

「え、リアル…って?」
「会いたいってずっと思ってたし。嫌ならもちろん言って」
「……嫌じゃない、けど、緊張する」
「じゃあ緊張しないように、まずは昼間に軽くカフェとかどう?」

会うのは怖い。でも、ずっと画面越しに話していた“彼”に、実際に会ってみたい気持ちは本気だった。

彼は20歳、都内の専門学生。私は18歳、都内の高校生。
場所は池袋駅の改札。待ち合わせの時間、私は5分前に着いたけど、すでに彼は来ていた。

「……ほんとに、Kuroくん?」
「うん、たぶん。Risaでしょ?」

画面で見てたアイコンとは違う、リアルな彼はちょっと大人っぽくて、でも笑うとすごく優しくて。
一気に緊張して、うまく言葉が出てこなかった。

「今日はありがとね。…写真よりかわいかった」

そう言われて、顔が熱くなるのが自分でも分かった。
ふたりで入ったカフェは、よくあるチェーン店だったけど、となりに彼がいるだけで特別に感じた。

「毎日ボイチャしてたけど、こうやってちゃんと目を見て話すと、変な感じするね」
「…うん。でも嬉しい」
「俺、実は結構ドキドキしてる。Risaが会ってくれるって言ってくれた日から、ずっと楽しみだった」
「私も…ちょっと怖かったけど、嬉しかった」

1時間くらい話して、ふたりでサンシャイン通りをぶらぶら歩いた。
道中、何度も手が触れそうになったけど、どちらからも繋ぐことはなかった。
でもその“繋ぎそうで繋がらない”距離が、かえって甘酸っぱくて、たまらなく心地よかった。

「また会える?」
「うん。今度はゲームじゃなくて、もっと普通にデートしよ?」

改札前で彼がそう言って、最後に少しだけ手を握ってくれた。
柔らかくて、あったかくて、ずっと画面の向こうにいた“彼”が、急に近づいた瞬間だった。

あのときの鼓動は、ゲームでも経験値でも得られない、特別な“リアル”の始まりだった。

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