大学2年の夏、私は友達の紹介で始めたボランティアサークルで、彼に出会った。
名前は直哉(なおや)くん。
最初に見た時の印象は、“ちょっと無愛想そうな人”。
活動中もあまり笑わず、いつも一歩引いたところから全体を見ているような人だった。
でも、真面目で手際がよくて、何より“誰に対しても雑にならない”ところに、私は少しずつ惹かれていった。
とはいえ、私と直哉くんの会話は、最初は「お疲れさまでした」とか「この書類、ここでいい?」くらい。
正直、相手にされてないと思ってた。
それが変わったのは、ある日の帰り道だった。
サークルの活動で遅くなり、荷物が多かった私を見て、
「駅まで一緒に行こうか?」と声をかけてくれた。
驚いたけど、素直に「ありがとう」と言って並んで歩いた。
その道すがら、話したのは、意外にも彼のお母さんのことだった。
「今日、久しぶりに実家からLINE来てさ。お母さん、うちで使ってるホワイトボードの写真見て“懐かしいね”って言ってた」
そこから、ぽつぽつと彼が話してくれた。
小さい頃、お母さんはよく地域の行事やボランティアに関わっていて、直哉くんも小学生の頃からよく手伝いについていってたこと。
その影響で、今も誰かのために動くことが“自然”になってること。
「うち、父親いないからさ。母親が一人で頑張ってるの見て、なんか……俺もちゃんとしなきゃなって思ったんだよね」
静かに、でも真っ直ぐにそう話す彼に、私は不意打ちのように心を持っていかれた。
その日から、彼のことを“好きかもしれない”と感じるようになった。
ただ、それからも私たちの距離は急には縮まらなかった。
直哉くんは相変わらず口数は少なく、話すときもどこか構えているように見えた。
でも、ふとしたタイミングで
「そのバッグ、前にも使ってたね」
「最近、疲れてない?」
「お菓子、甘いのより塩系好きでしょ」
――と、誰よりも私を“見てくれている”ことに気づいた。
だから、焦らず、少しずつ近づいていこうと思った。
冬のある日、サークルの仲間たちと忘年会をした帰り道。
最寄り駅まで同じ方向だった私たちは、また二人で歩いた。
その途中、直哉くんがふいに言った。
「……この前、母さんがさ。最近よく話す“○○ちゃん”って子、もしかして好きなんじゃないの?って言われてさ」
私は驚いて立ち止まった。
「それで、なんて答えたの?」
彼はポケットに手を突っ込んだまま、少し顔を赤くしてこう言った。
「“たぶん、そうかも”って答えた」
心臓の音が、自分で聞こえるくらいに大きくなった。
私は――彼のことをちゃんと好きだった。
いつの間にかじゃなくて、ちゃんと、惹かれて、見つめて、分かりたくて、
気づいたらもう、彼のことばかり考えるようになっていた。
「……私も、そうかも」
そう言うと、直哉くんは少しだけ笑って、「じゃあ、ゆっくり進めばいいか」と言った。
この人となら、時間がかかっても大丈夫だと思えた。
その後、私たちは少しずつお互いの距離を縮めて、
春には、正式に付き合い始めた。
今でも時々、直哉くんのお母さんの話を聞く。
「なんか今日、母さんが“○○ちゃん、うちに遊びに来たら?”って」
まだ緊張するけど、いつかちゃんとお礼を言いたい。
あの優しさを育てた人に、ちゃんとありがとうって。
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