街コンで隣に座った彼の「一口ちょうだい」が、なぜか忘れられなくて

「ほんとに行くの?街コンなんて…」
「行くよ!出会いないし。社会人なめないで?」

私は26歳、都内の事務職OL。友達に半ば強引に誘われて参加した街コンが、まさか“恋の入り口”になるなんて、そのときは思ってなかった。

場所は渋谷のカジュアルなダイニングバー。
男女合わせて20人くらいの規模で、時間ごとに席替えしていくタイプのイベント。正直、ああいうのはちょっと苦手で、テンション高い男子が連発する「趣味は?」「休日なにしてるの?」の定型文に若干うんざりしていた。

そんな中、3回目の席替えで現れたのが、彼だった。

「こんにちは。たけるって言います」
「…あ、はじめまして。ゆかっていいます」

声のトーンが落ち着いていて、目を見て挨拶してくれる彼に、第一印象でちょっとだけ安心した。

「なんか、ここまでで疲れてません?」
「バレました? ちょっとだけ…」
「わかります。テンプレ質問、そろそろネタ切れしますよね」
「それ、めっちゃ分かる…!」

気づけば、最初の乾杯から10分ほどで、私たちは他の席より笑い声が多かったと思う。

たけるくんは28歳で、IT企業の営業職。見た目は爽やかだけど、ちょっと抜けたところがあって、唐突に私のデザートを指差してきた。

「それ…おいしそう。ねぇ、一口ちょうだい」
「えっ、いや、街コンでそれ言う?(笑)」
「いやいや、逆にもうそれくらい砕けたほうがいいでしょ?」
「…じゃあ、あーんは?」
「それはまだ早い(笑)」

ふざけあって笑いながら、スプーンを差し出した。
彼がひと口食べて「うまっ」と言った顔、なぜかずっと忘れられなかった。

イベントが終わったあと、解散してすぐにLINEが来た。

今日はありがとう。ゆかさんと話してるの、ほんとに楽しかった。
よかったら、今度はふたりでちゃんとごはん行きませんか?

正直、街コンってその日限りの出会いだと思ってたから、少しだけ驚いた。
でも、返信は迷わなかった。

初デートは1週間後、恵比寿のオシャレなビストロ。
あの日と変わらず、彼は自然体で、会話も途切れることがなかった。

「またデザート頼むの?」
「頼むけど、今日は私があげない」
「なんで(笑)」
「え?ちゃんとしたデートで“ちょうだい”は失礼でしょ?」
「じゃあ……“俺のも食べて?”はOK?」
「…ズルい、それはOKに決まってる」

そんなやりとりが嬉しくて、笑ってしまう自分がいた。
ふたりで並んで歩く夜の帰り道。寒くない?って聞かれて、
「ちょっとだけ」と答えたら、彼は遠慮がちに私の手を取ってくれた。

ちゃんと手を繋いだのは、あの日が初めてだった。

今でも思い出す。街コンで一口食べさせたスイーツと、彼の驚いた顔。
あんなに人混みが嫌いだったのに、彼と出会ってから、ああいう場所も悪くないなって思えるようになった。

出会いは偶然。
でも、そこから続けていくのは、ちゃんとお互いの“選択”なんだってことを、彼が教えてくれた。

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