別れてから気づいた、本当に大切だった恋の話

彼女と別れたのは、大学3年の春だった。
原因は、たぶん「余裕のなさ」だったと思う。

就活が始まって、先の見えない不安に追われていた俺は、
彼女との時間を「息抜き」としてしか捉えられなくなっていた。

彼女がどんな思いで「最近ちょっと寂しいな」って言ったのか、
そのときはちゃんと受け取れてなかった。

「そんなこと言われても、今は俺だって必死なんだよ」
そう言って、彼女を傷つけたのは、俺のほうだった。

「分かった。じゃあ、もう連絡しない」
彼女のそのLINEを見て、胸がザラザラしたけど、「仕方ない」と思ったふりをして既読をつけた。

それが、最後だった。

それから数ヶ月、就活に集中するふりをしていたけど、
ふとした瞬間に、彼女との思い出がよみがえってきた。

コンビニで彼女が好きだったアイスを見るたび、
駅のホームで、手をつないで笑っていた景色を思い出した。
朝の目覚ましで鳴っていた彼女の好きなアーティストの曲。

全部、当たり前すぎて、手放してからじゃないと気づけなかった。

ある日、彼女のSNSを久しぶりに開いてみた。
新しい投稿には、知らない男の人との写真が映っていた。
「元気そうでよかった」
本気でそう思ったのに、喉の奥がギュッと締まった。

失ったことへの後悔は、時間が経てば経つほどに濃くなっていった。
今さら連絡をしても、もう何も戻らないのは分かっていた。

けど、心のどこかで、彼女が今もどこかで笑ってくれていたらいいなと思ってた。
自分のことはもうどうでもいいけど、彼女には幸せになってほしい。

その気持ちに気づいたとき、初めて「好き」ってどういうことか分かった気がした。
一緒にいることじゃなくて、大切にすること。
隣にいることだけがすべてじゃないって、やっとわかった。

それでも、あの時間があったからこそ、
今の自分は少しだけまともに人と向き合えるようになったんだと思う。

もう彼女に直接「ありがとう」は言えないけど、
ふと見上げた空の向こうに、届いていたらいいなって思う。

別れは終わりじゃなくて、
本当に大事なことに気づく、ひとつのきっかけだったのかもしれない。