彼の笑顔の隣にいる私と、もう一人の私

私の恋は、甘くて、少しだけ苦い味がする。

彼と付き合って一年が経つ。彼は誰にでも優しくて、誰とでも分け隔てなく話す、太陽みたいな人だ。そんな彼に、私は夢中だった。でも、彼のその優しさが、私を時々、深い闇の中に突き落とす。

彼の同僚の、アカネさん。彼女は彼と同期で、仕事のパートナー。いつも、彼の隣で楽しそうに笑っている。二人の間には、私には入ることのできない、仕事の苦労を共に乗り越えてきた、特別な絆があるように見えた。彼がアカネさんと話しているのを見るたびに、私の胸はチクリと痛んだ。

ある日の夜、私たちは二人でバーにいた。隣に座る彼の横顔を見つめながら、私はカクテルを一口飲んだ。少し酔いが回って、私は思わず彼に聞いてしまった。

「ねえ、アカネさんのこと、どう思ってるの?」

私の声は、自分が思っていたよりもずっと震えていた。彼が、驚いたように私を見た。そして、優しく私の手をそっと握ってくれた。彼の掌は、温かくて、私を安心させてくれる。

「なんでそんなこと聞くんだ?」

彼の声は穏やかだったけれど、私の心はざわめいていた。私の中で、嫉妬という名の嵐が吹き荒れていた。

「だって、いつも楽しそうに話してるから…」

私が俯くと、彼は何も言わずに、ただ私の手を強く、ぎゅっと握りしめてくれた。彼の温かさが、私の手のひら全体にじんわりと伝わってくる。彼の指の感触、その温かさ、そして、彼の優しい匂い。全部が私を包み込んで、私の心の中の嵐が、少しずつ静まっていく。

「アカネは、大切な同期だよ。でも、俺が大切にしたいのは、〇〇だけだ」

彼の言葉が、私の耳に響いた瞬間、涙が溢れそうになった。私が不安で、嫉妬で苦しんでいる時も、彼はいつも、私のことだけを見ていてくれたんだ。彼の言葉と、彼の温かい手の感触が、私の中の嫉妬を、愛へと変えていく。

次の日、私は会社の近くのカフェで、偶然アカネさんと二人きりになった。何を話せばいいのか分からなくて、私が戸惑っていると、アカネさんが、優しい笑顔で言った。

「カズマくん、〇〇さんのこと、本当に大切にしてるみたいだよ」

彼女はそう言って、少しだけはにかんで、私に話してくれた。私が知らない、彼の真面目な一面や、不器用な優しさのこと。そして、「カズマくんは、〇〇さんの前だと、すごく楽しそうに笑うんだよ」と、彼女は言った。

その言葉を聞いた瞬間、私の心の中の、嫉妬という名の甘い痛みが、スーッと消えていくのを感じた。私が勝手に抱いていた不安や嫉妬は、ただの幻だったんだ。彼の笑顔は、私だけのものじゃない。でも、彼の愛は、確かに私だけのものだった。

恋は、甘いだけじゃない。時として、嫉妬という名の苦い感情が混じることもある。でも、その苦しみを乗り越えた先には、もっと深く、もっと強い愛が待っている。彼の優しい笑顔と、温かい手の感触が、私に、そのことを教えてくれた。私の恋は、嫉妬という名の痛みを乗り越えて、もっと強く、優しいものに変わっていったんだ。