「ねえ、元気?」
久しぶりに届いたLINEメッセージには、懐かしい名前があった。もう何年も連絡を取っていなかったのに、まるで昨日まで一緒にいたかのような錯覚に陥る。
「久しぶり!」
と返事を送ると、
「実は……」
と続く言葉にドキドキしながら画面を見つめた。
「この前の飲み会で、君のこと思い出しちゃったんだ」
という彼の言葉に胸が高鳴る。
数日後、待ち合わせたカフェで向かい合った彼は、変わらない笑顔で迎えてくれた。昔話に花を咲かせながら、心の奥底に眠っていた感情がゆっくりと目覚めていくのを感じる。
「あの頃の私たちは、本当に何も知らなかったよね」
と私は呟く。
「でも、だからこそ素直でいられたのかもしれない」
と彼が応える。
その言葉に、なぜか涙がこぼれそうになった。過去の思い出が走馬灯のように蘇り、同時に今この瞬間の温かさに包まれる。
カフェの窓からは夕陽が差し込み、店内をオレンジ色に染めていた。彼と過ごした日々が次々と脳裏をよぎる。初めてのデート、初めて手をつないだ日、喧嘩して泣いた夜、そして初めて心が通じ合った瞬間……。
「あの時は楽しかったなあ」
と私は言った。
「本当にね」
と彼も懐かしむように微笑む。
「でも、お互い大人になって、変わってしまったこともあるよね」
「そうだね。でも、変わっていない部分もあるよ」
「うん。それは感じている」
二人はしばらく黙ってコーヒーを飲んでいた。その静かな時間が、まるで時間が止まっているかのようだった。
数時間後、別れ際に彼は言った。
「またこうやって会えるなんて思わなかったよ」
その言葉に私は頷き、手を握り返した。別れた後も心の中に残る温もりは、きっとずっと消えないだろう。そして、この再会がくれたのは新しい思い出だけでなく、自分自身を見つめ直すきっかけにもなった。
「ありがとう」
と心の中で呟きながら、私はゆっくりと帰路についた。背中越しに感じる懐かしい風景が、今も胸に温かさを残していた。