社会人3年目、28歳。
仕事にも慣れ、友達とも定期的に会ってはいるけれど、「恋愛」と呼べるような出会いはここ数年、なかった。
そんな私を見かねた大学時代の友人・麻衣が、唐突に言い出した。
「ねえ、今度さ、紹介するよ。マジで変な人じゃないから。てか、あんたに合うと思って」
紹介。
正直、そういうのはあまり得意じゃなかった。無理やり感があるし、期待しても微妙な空気になったら気まずい。
でも、麻衣がやたら推してくるので、しぶしぶ日程だけは空けておくことにした。
当日。場所は新宿のカフェレストラン。
麻衣と彼女の会社の同僚・大地さん、そして私の4人で会う予定だった。
「ゆき、こっちこっち!」
入口で手を振る麻衣の横に立っていたのが、大地さんだった。
スーツじゃないけどきれいめな私服で、身長が高くて、清潔感がある。
…パッと見、悪くない。というか、想像してたよりかなり好印象。
「はじめまして、大地っていいます」
「ゆきです。今日はありがとうございます」
声のトーンが落ち着いてて、妙なテンションの高さもない。
それだけでちょっと安心できた。
食事が始まると、会話はわりとスムーズだった。
趣味の話、仕事の話、休みの日の過ごし方。
無理に笑わせようとするわけでもなく、でも空気を読んで話題を繋いでくれる。
途中、麻衣と彼が話してる間に、私はこっそりスマホを開いた。
(紹介って、こんな自然な空気感あるんだ…)
予想外の好印象に、自分でも少しびっくりしていた。
食後、麻衣が「ちょっとトイレ」と席を外したタイミングで、2人きりになった。
「さっきから、たまにスマホ見てたでしょ?」
「え、あ…見てましたか?」
「うん。でも、嫌な顔してなかったから、ちょっとホッとしました」
そう言って笑った顔が、なんだかすごく柔らかくて。
「紹介とか、ほんとは苦手だったんですけど…今日は来てよかったって思ってます」
「俺も。会った瞬間、“あ、この人ならちゃんと話せそう”って思った」
そんな風に言われたの、何年ぶりだっただろう。
解散後、駅までの道で彼からLINEを聞かれた。
その日のうちに「今日はありがとう。また会えたら嬉しいです」とメッセージが来て、私はすぐに「こちらこそ」と返した。
翌週、彼から「今度、ふたりでご飯行きませんか?」と誘いがあった。
2回目の食事は、表参道のイタリアン。
ちょっと背伸びした雰囲気の店だったけど、彼の自然な振る舞いで気負わず楽しめた。
「ゆきさん、たぶんだけど、ちゃんと“向き合って話す”タイプですよね」
「え、なんで?」
「一緒にいて落ち着くし、自分も変に盛らずに話せるなって思った」
その言葉がうれしくて、何も言えなかったけど、心の中では小さくガッツポーズをしていた。
「紹介って面倒」──そう思っていた自分に、今ならこう言いたい。
“たまには、誰かの「合うと思う」って直感を信じてもいいよ”
それがきっかけで始まったこの関係は、今も少しずつ進んでいる。
派手じゃないけど、静かにちゃんと続いてる。
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