最初から、特別だったわけじゃない。
クラスで隣の席になったとき、名前すらよく知らなかった。
でも、あなたの声だけが、
教室の雑音のなかで妙に、ちゃんと聞こえた。
目が合うたび、
なんでもないような表情の奥に、
言葉にならない“揺れ”があった気がして──
それが、忘れられなかった。
告白なんてできるわけなかった。
だって、あなたはいつも、誰かと一緒に笑ってたから。
わたしなんかより、
ずっと似合う誰かと。
それでも、
帰り道の電車が同じだけで、うれしかった。
あなたがくれたプリントの隅に、
自分の名前があるだけで、
今日が“意味のある日”に思えた。
……ほんの、些細なこと。
だけど、その小さな“うれしい”が、
私の毎日を、呼吸させてくれてたんだ。
一度だけ、夢を見たことがある。
あなたが、私の名前を呼ぶ夢。
その声で目が覚めて、
涙が出た。
「現実じゃなかったんだ」って。
それでも、うれしかった。
夢でも、あなたが欲しかった。
あれから、何年経っても、
ちゃんと好きになれた人がいたとしても、
心のいちばん深い場所には、
やっぱり、あなたがいる。
他の誰かで埋まらない。
忘れようとするたび、
あなたの声が、記憶のなかでこだまする。
“わたしじゃなきゃ、だめだった”なんて、
一度も言ってもらえなかったけど──
わたしにとっては、
ずっと、“あなたじゃなきゃダメだった”。