夏休みに入ってすぐ、家族で毎年恒例の海に出かけた。
小さい頃から来ている場所だから、景色も匂いもなんとなく覚えていて、波打ち際を歩いていると懐かしさで胸がいっぱいになった。
そのとき、遠くからこっちに手を振る人がいた。
「……え?」
近づいてきたのは、まさかの幼なじみ、圭太だった。
「やっぱり、ほのか?」
私が小4のときに引っ越してしまった男の子。ちょっとぽっちゃりで、いつも麦わら帽子をかぶってた記憶しかない。
でも目の前の圭太は、背が伸びて、肌も焼けてて、ちょっとかっこよくなってて、最初誰か分からなかった。
「久しぶり……すごい、変わったね!」
「そっちこそ」
なんて話しながら、自然と一緒に海辺を歩く流れになった。
昔の話をしたり、地元の近況を聞いたり。あのとき言えなかったこととか、お互いの中学・高校の話とか。ぜんぜん気を遣わなくてよくて、気づけばずっと笑ってた。
「今も、覚えてるよ。あのときのこと」
「どのとき?」
「花火見ながら、隣で寝ちゃってたやつ」
――そうだった。圭太の肩に寄りかかって寝てしまった夏の夜。
「ちょっと恥ずかしいから、忘れててほしかった」
「無理だって。あれ、俺の初恋だから」
冗談っぽく笑ったその顔が、ふざけてるようで、少しだけ真剣にも見えて、私は急にドキドキしてしまった。
そのあと、家族のところに戻るまでの数分間、私たちは何も喋らなかった。でも、沈黙は全然気まずくなかった。
「連絡先、交換しとく?」
「……うん」
あの再会が、今年の夏の、一番の思い出になった。
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