県境デート、私たちは“まだ友達”のまま

社会人になって、恋って面倒くさいって思ってた。

学生のときみたいに「一緒にいるだけで幸せ」とか、そんな純粋な感覚、もう無理かもなって。仕事も疲れるし、休日はひとりでのんびりしたいし、恋愛はもっと落ち着いてからでいいやって、ずっと思ってた。

でも──

「どっか行かない?」

久しぶりに会った大学の同期、涼介からのLINE。その前の週に、4年ぶりに会って飲んだとき、なんとなく気が合って、連絡がまた復活したところだった。

「いいよ、どこ行く?」

即答した私に「じゃあさ、日帰り旅しよ」って返事が来た。

愛知県って便利な位置だなって思うのは、県境がわりと近くて、どこ行くにも車で1〜2時間ってとこ。三重のナガシマとか、岐阜の下呂とか、静岡の浜松あたりも行ける距離感。

で、最初に行ったのはナガシマスパーランド。私は絶叫苦手だけど、彼が「観覧車ならいいよね?」って聞いてきて、それで観覧車に乗った。

「遊園地の観覧車って、なんかエモいよな」

「そう?私はちょっとドキドキするかも」

「そりゃあ、俺と2人きりだしな」

──うん、たぶんこの人、ちょっと狙ってる。

でも、変にがっついてくるわけじゃなくて、ふとしたときに距離を詰めてくる感じ。正直、嫌じゃなかった。

その次の週は、モネの池を見に岐阜へ。正確には関市だけど、行ったことなかったし、SNSで見て綺麗だなって思ってた。実物は…ほんと、写真みたいだった。

「この池、告白したら成功しそうな雰囲気ない?」

「え、それ言われたら警戒するんだけど」

「しないよ〜、まだその段階じゃないし」

──その「まだ」って、どういう意味なんだろ。

ランチは美濃加茂のカフェで、テラス席でカレー食べながら、他愛もない話。趣味とか、仕事のこととか、昔の失敗とか。話すたびに、心の壁がすこしずつほどけていった。

3回目は、静岡の浜名湖ガーデンパークへ。広くて、のんびり散歩できるし、花もたくさん咲いてた。彼がスマホで撮った私の写真、びっくりするくらい自然体で笑ってて、それがちょっと恥ずかしかった。

「いい写真じゃん、アイコンにすれば?」

「無理無理、誰かに見られたら気まずいし」

「俺に見せる用でもいいけど」

──この人、ほんとに、じわじわくる。

それからも、週末になると「次どこ行く?」が定番になった。名古屋港水族館でイルカショー見たり、長良川の鵜飼いナイトクルーズに行ったり。全部、地元民でも意外と行かないような場所ばっかで。

でも、だからこそ、新鮮だった。

「付き合ってはないけど、ちょっと好きかも」

そう思いながら、私たちは毎回、“まだ友達”のまま出かけ続けてた。

ある日、静岡の三ヶ日みかんの直売所に寄って、みかんソフトを2人でシェアしたとき、ふと彼が言ったの。

「俺ら、なんなんだろうね」

「さあね。旅行仲間?」

「うん、それでもいいけどさ…俺は、もうちょっと先に行きたいかなって思ってる」

言われたとき、心臓がどくんって鳴った。

でも、その日は曖昧に笑って、「まだこの関係、もう少し楽しみたいかも」ってごまかした。すぐに付き合うのが怖かった。今のこの関係が、壊れたら嫌だと思ったから。

「そっか。じゃあ、今度はどこ行く?」

「伊勢神宮、行ったことないんだよね」

「よし、じゃあ神頼みしに行こうぜ」

私たちは、次の約束をして別れた。

たぶん私は、もう一歩踏み出してもいい頃なんだと思う。だけど、焦らずに、自分の気持ちをちゃんと確かめてから伝えたい。

週末のデートは、まだ続いてる。


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