2025年の春、私と彼は大阪・関西万博に行くことにした。 仕事は違うけど、二人とも最新技術や文化に興味があって、ずっとここを楽しみにしてたんだ。
最初に行ったのは落合陽一さんプロデュースのパビリオン「null²(ヌルヌル)」。 外覧は鏡面で、他の人の隣を見てるのに、どこか自分を見てるような、不思議な気分になった。 内部は、デジタルアバターと自分が対話する体験で、「この人は何を思っているのか」ってずっとそれを見てくる彼の目を見てたら、なんかまた新しい女の笑顔見せたくなったって。
その後は「いのちの未来」パビリオンへ。 ここは人間とロボットが共存する未来をテーマにしてて、最新のアンドロイドと人間が会話するシーンは、彼がずっと前のめりで「すげえ…」って口を開けてたし、私はその様子見るのが少し楽しくて。
昼ごはんはサウジアラビア館のレストランで、シュワルマ・マンディーとダッツが入った盛り合わせ皿をシェアしながら、「ちょっと調べてみたけど、サウジアって本当は記録的な文化も日常的に盛んだんだって」と言う彼の話を聞いて、意外ともいろん知ってるんだなって思った。
その後はオランダ館。ROBOATっていう水上ロボットの30分間デモ乗車。スマホで撮り合ったら、彼が「それプリントしていい?」って。 「やだよ、私変な顔してるし」と言ったら、「それがいいんだよ」って。
まだ日が明るうちにグランドリングに回って、三方平面の雰囲気の中、レモンネイドみたいに地面に座って、食べたデザートの話したり、この後どのパビリオン行きたいねって話したり。
その時、彼がめずらしく、コーヒー持つ手をパッと私の手に重ねてきて、「いつかここで、あの時こんな話したよねって、想い出せるようになったらいいな」って言ってきて、またキュンとした。
2025年の春、未来を見に行ったけど、そこで見つけたのは彼との、あるいみ未来のはじまりだったのかもしれない。
あたりが少しずつ夕焼け色に染まってきた頃、私たちは「いのちをつむぐ館」に立ち寄った。
ここは、世界中の多様な暮らしや環境の変化をテーマにした展示があって、幻想的なプロジェクションマッピングが印象的だった。
静かな音楽と優しい光の中で、彼がふいに小さな声で言った。
「こういうとこ、一緒に歩くなら君がいいって思ってたんだよね、実は」
びっくりして顔を向けると、目をそらしながらちょっとだけ照れてるみたいだった。
「え、それいつから?」
「最初に万博行こうって言ったときから、なんとなく」
ずるい。そんなこと、早く言ってよって思いながらも、うれしくて返す言葉がすぐに出てこなかった。
夜になって、万博のシンボルでもあるリング状の大きな建造物「グランドリング」がライトアップされた。
時間になると、リングの内側に映像が流れ、未来をテーマにしたショーが始まる。
光と音が一体になった演出に、周りの人たちも「わぁ…」って小さな声を漏らしてて、なんだか世界中の人がひとつになったみたいな気がした。
そんな中、彼がそっと私の手を握った。
何も言わずに、ただ、手を繋ぐだけ。
でもその温度が、言葉よりもずっと強くて、胸がきゅっとなった。
最後に私たちは、もう一度「null²」に戻った。
昼間よりも人が少なくて、鏡の中に映る私と彼の姿が、どこか映画のワンシーンみたいに見えた。
アバターと再び向き合いながら、彼がぽつりと言った。
「たぶんこの日、俺にとって忘れられない日になるわ」
「なんで?」
「君が隣にいてくれたから。未来見に来たつもりだったけど、今が一番いいって思えた」
その言葉が、ぐっと胸にしみて、私はただ「うん」ってうなずいた。
帰り道、彼と並んで歩きながら、次はどこに行こうか、どんな未来を一緒に見たいか、そんな話をした。
少し先のことだけど、「次」がちゃんとあることが、うれしかった。
2025年の春、未来を見に行ったはずが、いちばんまぶしくてリアルだったのは、彼と笑い合っていたこの1日だったのかもしれない。