深夜のライブチャットで話してた彼と、現実で目が合ったときの不思議な感覚

社会人2年目。職場にも慣れたけど、日々の生活はどこか単調だった。
残業から帰ってきて、夕飯を済ませて、お風呂に入って、ベッドに倒れこむ。
でもすぐには眠れなくて、スマホでつい、ライブチャットアプリを開く。

別に出会い目的じゃなかった。
ただ誰かと話したくて。画面越しでも、声があるだけで少し気が紛れる気がした。

そこで出会ったのが「カナト」くんだった。

最初は何気ないコメントだった。

「残業お疲れさま」
「ちゃんとご飯食べた?」

他の人よりもちょっとだけ気遣いがあって、テンションも落ち着いてて、それが心地よかった。
数回目には、私がいつも寝る前にログインする時間に、彼もちょうど現れるようになった。

「また来てくれたんですね」
「うん。今日も声が聞きたくて」

そんな甘いセリフを言われたのも久しぶりだった。
でも不思議とイヤな感じがしなかったのは、彼の声がやさしくて、どこか寂しそうに聞こえたからかもしれない。

何度か通話もした。
趣味の話、仕事の話、好きな食べ物や休日の過ごし方。
聞いてくれる彼の声が、夜の静けさと相まって、妙に落ち着いた。

ある日、彼がポロッと言った。

「実は来週、東京に出張で行くんだ」
「えっ、東京じゃないんですか?」
「大阪。普段は関西だけど、今回ちょっとだけ長めに出ることになって」
「じゃあ…ほんとに来るんですね、こっちに」

そこから、メッセージのやりとりはLINEへと移行した。

私も本当は会ってみたいと思っていた。
でも、画面越しの彼がリアルになることへの不安も大きかった。

「無理にとは言わない。でも、せっかく東京に行くから、ちょっとだけ会えたら嬉しい」
「じゃあ…昼間、人が多いとこで、短めに」
「それで十分。顔が見られるだけでも」

待ち合わせ場所は新宿南口のカフェ。
12時に指定したけど、私は11:45には到着していて、緊張で落ち着かなくなっていた。

「……あれ?」

スマホを見ながら近づいてくる彼。
画面越しで何度も見た顔と、現実で見る顔が少しだけ違って、それでも確かに“カナトくん”だった。

「はじめまして…だね」
「はじめまして。…でも、なんか変な感じしない?」
「うん、ずっと知ってた人と今やっと会った気分」

笑い合って、注文したコーヒーを片手に、ようやく落ち着いた。
初対面なのに、不思議と沈黙は怖くなかった。

「こうやって会って、がっかりしなかった?」
「むしろ、声と同じくらい、優しそうだなって思った」
「そう言ってくれるの、めっちゃ嬉しい…」

彼は出張の合間に時間を作ってくれていて、ほんの2時間の面会だった。
でもその間に、話す内容は夜のチャットよりずっと濃くて、もっと彼のことを知りたいと思った。

別れ際、彼がふいに口を開いた。

「また来ても、会ってくれる?」
「…次は、もっと長い時間がいいな」

その返事を聞いたとき、彼の顔がほんの少しだけ赤くなったのが、妙に可愛く見えた。

東京と大阪。
距離はあるけど、心の距離はもうほとんどなかった。

“画面越し”から“本物”になる瞬間。
あの出会いは、単なる暇つぶしじゃなくて、ちゃんと私の心に残る恋の始まりだった。


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