大学2年の夏休み、久しぶりに地元の友達・圭吾の家に遊びに行った。
ゲームして、くだらない話して、気づけば高校時代と変わらない時間が流れていた。
「ちょっと飲み物取ってくるわ」って圭吾がキッチンに行ったあと、
「こんにちは」って声がして振り向くと、圭吾の妹が立っていた。
中学のころまではよく顔を合わせてたけど、正直それ以来。
「久しぶりだね」って笑う彼女は、すっかり“女の子”になっていて、
思わず見惚れてしまったのを自分でも自覚した。
名前は莉子。
高校3年で、受験生なのにどこか落ち着いていて、でも柔らかい雰囲気を持っていた。
それから、圭吾の家に遊びに行くたびに少しずつ会話するようになった。
「兄ちゃんといるときの〇〇くん、ちょっと子どもっぽいですね」なんて冗談を言われたりして、
いつの間にか、彼女と話す時間を楽しみにしている自分がいた。
でも心のどこかで、「圭吾の妹」という線を超えちゃいけないと思っていた。
相手はまだ高校生。
俺は大学生で、しかもその兄とずっと仲良くしてきた。
それでも、夏休みの終わり頃。
いつものように圭吾の家でだらだらしていたとき、偶然、廊下で莉子と2人きりになった。
「…もう、大学戻るんですか?」
「うん。来週から講義始まるし」
「…そっか」
少しだけ黙ってから、彼女が言った。
「わたし、〇〇くんと話すの、けっこう楽しみにしてたんです」
その一言が、心に刺さった。
「俺も…莉子と話すの、楽しかったよ」
言ったあと、少しだけ手が触れた。
触れるつもりはなかったのに、離れられなかった。
「…会えなくなったら、ちょっとさみしいかも」
彼女が小さな声でそう言ったとき、もう“気のせい”ではいられなかった。
「莉子のこと、好きになってた」
気づいたら言っていた。
彼女は驚いた顔をしたあと、ゆっくり頷いた。
「わたしも…たぶん、ずっと前からです」
それから数日は、圭吾には何も言えなかった。
でも、ちゃんと伝えたら、「…マジかよ」って苦笑いしながらも、
「妹泣かせんなよ」って一言だけだった。
今はまだ、ちゃんと距離を守りながら少しずつ会ってる。
焦らずに、ちゃんと一歩ずつ育てていくつもりだ。
あの日、触れた手のぬくもりが、今もまだ、忘れられない。