たぶん、あの人を好きになったのは、2年の秋ごろだったと思う。
席替えで隣になって、最初は「声ちっさ」って言われてちょっとイラッとしたけど、気づいたら毎日話すようになってた。ノートを貸したり、忘れ物を分けたり、そんなことを自然にやり取りするうちに、なんとなく、その人のことばかり気にするようになってた。
笑うと目が細くなるところとか、誰にでも丁寧なところとか、プリント配るとき、全員の分をちゃんとそろえる几帳面さとか。
私はそれを「好きだ」ってすぐには思えなくて、ただ「この人のそばにいるのが楽だな」っていう感じだった。
でもある日、彼が他の女子と話して笑ってたのを見て、胸がきゅってした。
あれで気づいた。「あ、私、好きなんだ」って。
それからはもう、全部が不安だった。
目が合ってもそらされると落ち込んだし、LINEの返信がちょっと遅いと、何か悪いこと言ったかなって考えすぎて、送信取消の履歴がどんどん増えた。
友達にも相談できなくて、ノートの隅に名前のイニシャルを書いて、見られないようにすぐ消して。
そんな毎日を過ごしてるうちに、3年の3月になってた。
進路が決まって、卒業式が近づいてきて、このまま何も言わずに終わるのが本当に怖くなった。
私はある日、放課後の教室に残って、机に突っ伏して泣いた。小さく、静かに。でも、そのとき心の中では決めてた。
「絶対に言う。伝える。たとえ振られても、後悔はしない」って。
卒業式の翌日、個別の進学説明があって、そのあと昇降口で彼に声をかけた。
「少し、いいかな」って。
声は震えてたし、手も冷たかった。でも彼はちゃんと立ち止まって、こっちを見てくれた。
私は言った。「ずっと、好きでした。すごく一緒にいるのが楽しくて、気づいたらずっと見てて…」
ここまでしか言えなかったと思う。途中で涙が出そうになって、言葉がつまった。
彼は驚いた顔をしてたけど、ちゃんと受け止めてくれて、「ありがとう」って言ってくれた。
「……俺、びっくりした。でも、言ってくれて嬉しい。ごめん、今は…すぐには答えられないけど」
そのあと何を話したかは、正直あんまり覚えてない。
でも家に帰って、制服をハンガーにかけて、カーテンを閉めるとき、なんか泣いた。
悔しさとか悲しさじゃなくて、ちゃんと自分の気持ちを言えたことが、嬉しかったんだと思う。
あの日からもう何年も経つけど、あの時間は今でも私の中ですごく大事なまま残ってる。
これを誰かに読んでほしいのは、きっと「怖かったけど言った」ってことを誰かにわかってほしいからだと思う。
声が震えても、手が冷たくても、好きって言えた。
それが私の、はじめての恋だった。
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