ずっと、あなたじゃなきゃダメだった
最初から、特別だったわけじゃない。クラスで隣の席になったとき、名前すらよく知らなかった。 でも、あなたの声だけが、教室の雑音のなかで妙に、ちゃんと聞こえた。 目が合うたび、なんでもないような表情の奥に、言葉にならない“揺 … 続きを読む
最初から、特別だったわけじゃない。クラスで隣の席になったとき、名前すらよく知らなかった。 でも、あなたの声だけが、教室の雑音のなかで妙に、ちゃんと聞こえた。 目が合うたび、なんでもないような表情の奥に、言葉にならない“揺 … 続きを読む
「好きだよ」何度言っても、その言葉は、あなたに届かない。 言葉にしたとき、あなたは困った顔をした。笑って誤魔化した。あるいは、なかったことのように、話題を変えた。 わかってた。最初からずっと、私のことなんて、“そういう目 … 続きを読む
どれだけ愛しても、きっとこの想いは、あなたに届かない。 わかってる。最初から、そうだった。 あなたには好きな人がいた。その人の話をするあなたの目が優しくて、その名前を呼ぶときの声が温かくて、私は、何度も自分の感情に蓋をし … 続きを読む
名前を呼ばれるって、こんなに嬉しかったっけ。 ずっと昔。私は、自分の名前が嫌いだった。小学生の頃、ちょっと古風な名前だとからかわれて、中学では“呼ばれること”が恥ずかしくて、高校ではあえて目立たないようにして、誰にも名前 … 続きを読む
SNSでたまたま流れてきた、地元の夏祭りの花火大会の写真。何気なくタップしたその一枚の中に、あの夏のことを急に思い出してしまった。浴衣の袖をふわっと揺らしていた彼の後ろ姿まで、こんなにもはっきり残ってるなんて、自分でも驚 … 続きを読む
友達と飲んで帰ってきたある晩、スマホに見慣れない番号からの着信履歴が残っていた。留守電なんて今どき珍しいなと思って再生した瞬間、その声で全身が固まった。 「……沙月? 俺だけど、佐伯。急にごめん。ちょっと、声聞きたくなっ … 続きを読む
あの帰り道のことを思い出すたびに、胸の奥がくすぐったくて、でも少し痛い。もう何年も経っているはずなのに、私はまだあのときの空気を、手の温度を、はっきりと覚えている。 高校二年の秋。私は、同じクラスでテニス部の部長をしてい … 続きを読む
大学三年の夏、バイト終わりに立ち寄ったコンビニで、私は偶然、元カレに再会した。 「……あれ、友梨佳?」 声をかけられた瞬間、心臓が跳ねた。振り返ると、そこには変わらない笑顔の優斗がいた。少し髪が伸びていて、相変わらず白シ … 続きを読む
彼と初めて話したのは、駅の階段でした。 ちょうど帰宅ラッシュの時間で、駅は混んでいたのに、私の前で男の人が小さな女の子の手を引いて、落としたぬいぐるみを拾ってあげていたんです。 その姿がなんとなく気になって見ていたら、そ … 続きを読む
「今日はさ、ちょっとだけ遠回りしない?」 そんな彼の一言で、いつもとは違う帰り道を歩くことになった。放課後、校門を出た瞬間に夕陽がちょうど沈みかけていて、空がやさしいオレンジ色に染まっていた。 「このへん、あんまり来たこ … 続きを読む
大学の2年の終わり頃、私は春音(はるね)という子とよく一緒にいた。 サークルもクラスも違ったけれど、共通の友人の誕生日会で隣に座ったのがきっかけだった。 「音楽、なに聴くの?」 たったそれだけの質問に、彼女がすごく嬉しそ … 続きを読む