ただ、“おはよう”って言えるだけで、嬉しかった
彼女は、二軒隣の家に住んでいた。 朝、ゴミ出しのときにすれ違う。帰り道、玄関先で花に水をやっている姿を見る。それだけだった。 だけど──いつからか、目で追ってしまうようになった。 彼女はいつも、柔らかく笑ってた。「おはよ … 続きを読む
彼女は、二軒隣の家に住んでいた。 朝、ゴミ出しのときにすれ違う。帰り道、玄関先で花に水をやっている姿を見る。それだけだった。 だけど──いつからか、目で追ってしまうようになった。 彼女はいつも、柔らかく笑ってた。「おはよ … 続きを読む
─男(34歳)バツイチ、元妻と5年ぶりに連絡を取る─第1章:別れた理由を、忘れるまで ニュース速報は、いつものようにテレビの右上に現れた。そして、それが“いつもの”じゃないことを、すぐに理解した。 『直径12kmの小惑星 … 続きを読む
その日も、断られるつもりでいた。 三度目の告白は、春の終わりだった。 風がやけに温くて、街路樹の緑が眩しかったことだけは覚えている。あの時も、君は困ったように笑って、首を横に振った。だけど、ちゃんと目を見て、返してく … 続きを読む
大学の2年の終わり頃、私は春音(はるね)という子とよく一緒にいた。 サークルもクラスも違ったけれど、共通の友人の誕生日会で隣に座ったのがきっかけだった。 「音楽、なに聴くの?」 たったそれだけの質問に、彼女がすごく嬉しそ … 続きを読む
俺が毎日のようにログインしてるオンラインゲームには、ギルドっていう仲間のグループがある。その中で、いつも一緒にプレイしてたのが「はるる」って名前のプレイヤーだった。 男か女かもわからなかったけど、やたら気が合って、いつの … 続きを読む
年末の帰省ラッシュで、新幹線の指定席はどこも満席。渋々深夜バスを予約した俺は、22時発のバスに乗るため、新宿のバスターミナルにいた。寒風吹きすさぶ中、人の多さと慣れない夜行バスの空気感に、ちょっと気が重かった。 指定され … 続きを読む
その子は、同じ職場の経理の佐伯さん。年はひとつ下で、メガネをかけた地味めな子。声も小さいし、あまり人としゃべってるのを見たことがない。 でも、ある日、社内システムのトラブルがあって、俺が対応してたら、「お手数かけてすみま … 続きを読む
ねえ、これ言ったら笑われるかもしれないけど、私、観覧車ってちょっとトラウマだったんだ。高校の時に、初めて付き合った人と乗って、めっちゃ気まずい別れ話された場所だったから。 それから何年も観覧車は避けてて、むしろ見るのも苦 … 続きを読む
「ピアノ、今から始めたいって本気ですか?」 そう笑いながら言ったのは、個人レッスンの教室で受付をしていた彼女。僕は29歳、ずっと仕事漬けの生活の中で、何か音のある時間が欲しくて、思い切って社会人向けの音楽教室に通い始めた … 続きを読む
高3の秋。高校生活最後の文化祭が近づいていて、クラスではなんとなく盛り上がりつつ、でもどこか「これが最後か」っていう雰囲気も混じってた。 うちのクラスは「お化け屋敷」に決まった。正直、俺はどっちかというと「見てる側でいい … 続きを読む
高校2年の夏。父の転勤で、私は全然知らない土地に引っ越した。転校って、想像以上にしんどい。制服も違えば、方言も微妙に違うし、みんなの中に入っていくタイミングもわからない。 教室で「よろしくお願いします」って自己紹介したと … 続きを読む