駅前のカフェで待ち合わせをしていると、ガラス越しに見覚えのあるシルエットが目に入った。
背筋を伸ばして歩くその姿は、子どもの頃の彼とは少し違う。
でも、笑った瞬間に――あぁ、やっぱりあの頃のままだ、と胸が熱くなった。
「久しぶりだな。」
少し低くなった声に、私の心臓は一拍遅れて跳ねる。
会うのは高校を卒業して以来、十年ぶりだ。
カフェの奥の席に座り、互いの近況を話す。
仕事のこと、趣味のこと、共通の友人の話。
言葉の間に、懐かしさと安心感がふわりと漂う。
「覚えてる? 川の土手で花火やったこと。」
彼がふいに言った。
もちろん覚えている。あのとき、火薬の匂いと一緒に胸が高鳴って、でも言葉にはできなかった気持ち。
コーヒーを飲みながら、彼が少し照れたように笑う。
その仕草に、あの夏の夜の景色が一瞬で蘇った。
そして気づく――あの頃感じた気持ちは、ずっと消えてなかったんだ。
カフェを出ると、外は夕暮れ。
駅までの道を並んで歩くと、肩と肩がかすかに触れる。
ほんの一瞬、彼の歩幅が私に合わせられるのを感じた。
そのさりげない優しさが、言葉よりもずっと強く胸に響いた。
別れ際、「また会おうな」という彼の声が、夕焼けの空に溶けていく。
私はただ笑って頷いたけれど、心の奥では次に会う日を指折り数え始めていた。