“あの時の君”が、目の前にいた

図書館の隅で、
目を疑った。

あの頃と、まるで同じ横顔。
ページをめくる指の形も、少し斜めに傾ける癖も──
全部、変わってなかった。

それは、
高校時代、三年間ずっと片思いしてた相手だった。

話したことは、数えるほどしかない。
クラスも一緒にならなかった。
でも、よく隣の席にいる人と笑っていた姿を、
私はいつも遠くから見ていた。

恋だと気づいたのは、卒業式の帰り道。

もう会えなくなると思ったら、
涙が止まらなくて、
あの気持ちはただの“憧れ”なんかじゃなかったと気づいた。

あれから、もう7年。
思い出なんて、風化してるはずだったのに。

「……もしかして、◯◯高校だった?」

声をかけられて、心臓が跳ねた。

彼は、私のことを覚えていた。

しかも──
「ずっと、話しかけたかったんだよね」なんて、
冗談みたいな言葉をくれた。

再会は偶然だった。
でも、それが運命だったかのように、
私たちはすぐにまた、連絡を取り合うようになった。

「もし、あの時、話しかけてたらどうなってたと思う?」

彼がふと、そんなことを言った夜、
私は静かに笑った。

「たぶん、私はずっと同じ気持ちだったと思う」

一度も始まらなかった恋が、
何年も経って、やっとページをめくった気がした。

“忘れられなかった人”が、
“今の私をちゃんと見てくれる人”になった。

それは、
時間だけが作れる奇跡なのかもしれない。