付き合って、最初の一年は会えなかった。
私たちは、SNSで出会った。
共通の趣味。夜更かしの投稿。
何気ないコメントのやり取りが、
気づけば毎日のように続いてた。
住んでる場所は、
飛行機で数時間の距離。
最初から“遠距離”というハードルがあって、
それでも、惹かれてしまった。
告白は、通話の中だった。
「好きだと思ってる」
「……私も」
初めて画面越しで“彼氏・彼女”になったあの日、
何も変わらないはずなのに、
心だけは、どこまでも繋がってた。
でも──
会えない恋は、
思ったよりも寂しさを連れてくる。
画面の中の君は、いつも笑ってるけど、
手を伸ばしても、そこには触れられない。
誕生日も、クリスマスも、記念日も、
全部“バーチャル”だった。
ケーキの画像。ギフトのスクショ。
それでも私は、君の「おめでとう」だけで泣けた。
周りの友達は、「ありえない」と言った。
会ったこともない人と付き合うなんて。
でも私は、君と過ごす時間の中で、
“会えないからこそ信じる強さ”を知った。
「いつか会おう」
「絶対、抱きしめる」
「匂いで覚えるくらい、近くで感じたい」
その“いつか”を夢見て、
毎日を過ごしてた。
そして、一年後。
本当に、君が来てくれた。
駅の改札で、
スマホ越しじゃなくて、
本物の君と目が合って、
私、泣いた。
「泣くなよ」って言いながら、
君も泣いてた。
その日、
初めて手をつないで歩いた街は、
見慣れた場所のはずなのに、
すべてが新しく見えた。
遠距離だった一年。
画面越しの毎日。
それでも、全部本物だった。
あの日から、
私は“本当に会える奇跡”を信じられるようになった。
一度会っただけで、
“この人と一緒にいたい”って気持ちは、もっと強くなった。
それまでは、画面越しで繋がってた。
声だけで、笑顔だけで、想像してた彼が、
実際に隣にいる。
匂いがあって、体温があって、
手をつなぐとちゃんと“握り返してくれる”人だった。
──そのぬくもりを、一度でも知ってしまったら。
もう、画面には戻れないって思った。
「また、すぐ会えるよ」
「今度はこっちから行くから」
そう言い合って、約束して。
でも実際は、簡単なことじゃなかった。
仕事や学校、生活のタイミング、
交通費、宿泊先……
遠距離には、“好き”だけじゃ乗り越えられないこともある。
だけど、それでも。
月に一度会えるだけで、
何時間でも電車に乗って、
会って3秒で抱きしめて、
別れ際にはまた泣いて──
「帰したくないな」
「引っ越しちゃおうかな」
そんな冗談みたいな言葉が、だんだん本気になっていった。
半年後。
彼は本当に、私の街に引っ越してきた。
「一緒にいるほうが、自然だったから」
理由は、それだけだった。
“遠距離恋愛”は、もう終わった。
でも、恋は終わらない。
むしろ、ここからが“本当の恋人”だった気がする。
会える毎日が、奇跡みたいだった。
何気ない朝、
一緒に食べるご飯、
寝る前の「おやすみ」が隣から聞こえる。
ずっと望んでたのに、
現実になると、それが“当たり前”になってしまうのが怖くて、
私は毎日、彼の手を確かめるように握った。
「大丈夫。ずっとここにいるよ」
彼は笑って、
私の手を、前よりもぎゅっと強く握ってくれた。
あのとき、画面越しに泣きながら「好き」って言ってよかった。
出会ってよかった。
恋って、距離を超えるんだ。
だって私は今、
“いちばん近くにいる彼”に、また恋してる。