それは、四年生の春だった。
教室のロッカーにしまった赤いランドセルの中に、
放課後、こっそり一通の手紙が入ってた。
「〇〇ちゃんへ
ずっと前から、好きでした。
よかったら、明日の休み時間に、図書室の奥に来てください。」
──差出人の名前はなかった。
ドキドキして、誰にも言えなくて、
でもなんだか嬉しくて、
眠れないくらいその手紙を何度も読み返した。
翌日。
緊張で手が汗ばみながらも、私は図書室の奥に向かった。
誰もいない。
しばらく待っても、誰も来なかった。
でも、帰ろうとした瞬間──
本棚の影から、同じクラスの男の子が顔を出した。
「……ごめん。手紙、俺」
彼は顔を真っ赤にしながら、言った。
普段はふざけてばかりで、
給食の牛乳を飲むときにわざと音を立てて笑わせてくるような、
そんな男子だった。
「なんで図書室なの?」って聞くと、
「ここなら、みんな来ないし……なんか、静かで話しやすいかなって」
って、小さな声で言った。
「えっと……返事は?」
そう聞かれて、私はうつむいたまま頷いた。
その時、彼の顔がパァッと明るくなったのを見て、
こっちまで笑ってしまった。
手をつなぐわけでも、
名前を呼び捨てにするわけでもなかったけど。
それからの毎日、
彼が休み時間に私の席の横に立ってくれることが、
すごく嬉しかった。
まだ「付き合う」とか「彼氏彼女」とか、
よくわからなかったけど──
あれは、たしかに、
“私のはじめての恋”だったと思う。