手紙でしか伝えられなかった、まっすぐな気持ち

「今日はさ、ちょっとだけ遠回りしない?」

そんな彼の一言で、いつもとは違う帰り道を歩くことになった。放課後、校門を出た瞬間に夕陽がちょうど沈みかけていて、空がやさしいオレンジ色に染まっていた。

「このへん、あんまり来たことないかも」
私は横目で彼を見ながら言う。彼――遼は、にやっと笑って「俺も」なんて言った。じゃあ、なんで誘ったのよ、って心の中でツッコミを入れながらも、こんな時間が少し嬉しい。

彼とは同じクラスだけど、普段からよく話すようになったのは、体育祭の準備がきっかけだった。班が同じになって、それからなんとなく、廊下ですれ違えば笑い合って、帰り道も一緒になることが増えた。

「こっち行ってみようぜ」

彼の言うがまま、細い坂道をのぼっていくと、ちょっと開けた場所に出た。小さな神社の境内で、誰もいない静かな空間。鳥居の向こうに広がる空が、まるで映画のワンシーンみたいにきれいだった。

「……ここ、意外といいね」

「だろ?なんか、話したくなったんだよな」

「え?」

彼は何かを言いかけて、でも少し黙った。

私は彼の顔をじっと見つめて、言葉を待つ。沈黙が苦じゃないって思えるのは、きっとこの人だから。

しばらくして、彼はポケットから折りたたんだ紙を取り出して、私に渡した。

「……読んで。帰ってからでいいから」

そう言って、彼はそっと視線を外した。

ドキドキしながら受け取った手紙は、制服のポケットに大切にしまった。

帰り道、あんなに話してたのに、神社を出たあとは二人ともほとんど喋らなかった。ただ、歩くリズムだけが合っていた。

その夜、家でこっそり手紙を開いた。

“好きです。言葉にすると恥ずかしくて、紙に頼ってしまいました。
でも、気持ちだけは本物です。もし少しでも嬉しいと思ってくれたら、明日また一緒に帰ってください。”

胸がいっぱいになった。

翌日、いつもの帰り道。昇降口で彼が私を見つけて、照れくさそうに笑う。

私は頷いて、言葉は何もいらなかった。ただ一緒に歩き出した、それだけで十分だった。

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